呪いの着メロ

 康介の奴、震えてやがる。そういえば三嶋は? さっきから随分と大人しいけど・・・・・・

 俺が三嶋にゆっくりと視線を動かしてみると、三嶋は呑気に爪を弄っていた。

「おい、何やってるんだ? せっかく霧谷が話してるのによ」

「だってぇ、私は昨日、全部読んで内容知ってるんだもん」

 そういえばそうだったな。

「もしかして、それが『呪いの着メロ』に変わってるのかな? 午前零時というのも共通点だし」

「だよねー! 『呪いの歌』=『呪いの着メロ』ってのは、結構確信に近づいてきたんじゃない?」

 不安そうな康介に対して、嬉しそうな三嶋。ここまで対極だとちょっと面白いな。

「結論出すのは早いけど。この本が元になってると考えたほうがいいかもな」

 『片目の少女』か。これって実話なのか?

「霧谷、これって実話を元に・・・・・・とかそういうの、書いてあった?」

 俺の質問に霧谷は首を横に振った。ということは、フィクションなのか?

 そう思ったら、霧谷が付け足した。

「分からない。あとがきとか、そういうの、書いてなかったから」

「・・・・・・ますます不気味じゃないか」

 出版社か、著者の演出だろうか。それとも単なるミスか・・・・・・。

 それが結果として怖さを増しているな。

「なーんか楽しくなってきたね!」

 それ、きっとお前だけだよ。三嶋。

 そんな時、康介が俺に耳打ちしてきた。

「ねぇ、あのこと、二人に話す?」

「あのこと? あぁ、あれか・・・・・・」

「ん? なになに?」

 さすが恭華イヤーは地獄耳。まぁ、たった四人だけのグループでヒソヒソやってりゃ目立つわな。


 俺は三嶋と霧谷に今朝の康介との会話を話した。

 当然、三嶋は興味を示して、「転送して!」と頼んできた。霧谷も頼むかと思ったら「繋がらないのならいい」と冷めた感じで断ってきた。やっぱり霧谷ってよく分からない。