ーーー健夫サイドーーー
俺はガキの頃から心に決めた奴がいる。
そいつはずっと俺を見てくれなかった。
いつもアニキの背中ばっか嬉しそうに追いかけて。
俺の事はは死んだ魚みたいな目で見る。
俺を見てもらいたくてちょっかいばっかかけて、しょっちゅう泣かしてた。
俺を意識してもらいたくて
近寄ってくるウザい女どもとわざとイチャイチャしてた。
これっぽっちも気にかけてくれなかったけど……
中学くらいになると女として輝きだした天は男の視線を釘付けにするようになった。
天に近付こうとする男には、俺の存在を意識させて遠ざけた。
俺の容姿は普通を遥かに上回るらしいから、男どもは俺の存在を知ると天には近づかなくなった。
寄ってくる女は腐るほどいて
すんごいたくさんの女に追いかけ回され告白、ラブレターは毎日だったのに
天だけは俺を男として見てはくれなかった。
天だけは俺にちっともなびいてくれなかったんだ。
アニキが結婚した時は正直、スゲー嬉しかった。
やっと、自分にもチャンスが来たって…
でも、傷ついて泣く天を見て
俺も同じくらい傷ついて
酷い言葉を浴びせてしまった。
俺はチャンスを棒に振ってしまった。
天を絶対俺のものにすると決めてた俺は焦りに焦った。



