俺が着いた河川敷はいつもと変わらなかった。空は晴れ渡り、河は澄みきっている。


その澄みきった河の水があまりにも気持ちよさそうだったので、河のすぐ近くに腰かけた。靴と靴下を脱いで足を河に入れた。冷たい水が流れていく感覚が心地よかった。


空を見上げると夏らしい入道雲が浮かんでいる。そんな空をしばらく眺めていると、どこかから若い女の声がし
た。


「なんで中学生がこんな時間に学校にいないのー?」


明らかに俺に向けられた言葉だったので、シカトしようかと考えているうちに声の主は目の前までやって来た。


見るとセーラー服を来た女が俺の近くに立っていた。あのセーラー服は確かこの河川敷の近くの高校の制服だったと思う。


「お前だって高校生じゃねえか。」

俺は俺の横に腰かけるその女を見ながら言った。

「残念でしたー!私の高校、今日終業式だったから早く終わったの。」

女はそう言って、俺の顔を覗き込んでできた。よく見ると割りと整った顔をしていた。

「その制服、貴清学園だよね。名門の・・・。なんで学校に行かないの?」

女が不思議そうに尋ねて来た。

「別に・・・。」

女がうざったかったので、俺はぶっきらぼう言った。

「あの学校、頭いいし、倍率も高いから学校嫌いだと受からないはずなのに・・・」

そう言って、女は俺を見つめたまま黙り込んだ。照れ臭くなった俺は女の反対方向を向いた。女はしばらく何かを考えていたが、立ち上がった。

「そろそろ帰るよ。熱中症に気を付けてね。」

そう言って立ち去る女を俺は視線で見送った。

「言っとくけど、私おせっかいだからー」

少し離れた先から女はそう叫んでいた。それがどういう意味なのか、理解するのにあまり時間はかからなかった。