閉ざされた心





「これ、どうしよう」

輝く指輪を眺め、ポスンッとソファに腰を下ろす。

ダイヤの輝きは眩しすぎて、自分の指にはまっているのはおかしな感じがした。
持っていてくれるだけで救われる。なんて言われて、突き返すこともできなかった。

河野の目の前ではずせなかった指輪をそっと抜き取り、小さな箱に戻してみたけれど、はずしてもなお輝き続けるその光が純粋すぎて、目をそらすようにして蓋を閉じた。

指輪は薬指からなくなったはずなのに、重みがまだそこにあるような気がして私はぎゅっと手を握る。
ソファにコロリと寝転がりパッと手を開くと、さっき指輪がはまっていた薬指を目の前に掲げた。

勇気なんていうレベルの問題じゃないよね。
私、河野を傷つけてるんだよね。

失いたくなくて遠ざけられなかったことで余計に溝を深めて、今まで時間をかけて信頼しあってきたものが壊れていく気がして恐くなった。
聡太の嫉妬に戸惑っていた分、河野のきっぱりとした態度に安心してしまっていた。

いつだって意見をぶつけ合って最善の道を探してきた相手だから、つい頼りにしてしまう。
けど、河野の気持ちを遠ざけてしまえば、きっと今までのようにはいかなくなる。
何でも言いあえていた時の私たちには、戻れなくなる気がする。
まともに言葉も交わせなくなるようなことになるなんて、考えたくないよ。

けど、聡太のことを思えばそんなことも言っていられないよね……。

どうしてこんな風になっちゃったんだろう。
私は、何か間違ってしまったんだろうか。

どんな失敗をしてしまったの?
どうすればよかったの?

二人を大事に想えば想うほど、どちらも遠ざけられない。