白い壁で囲まれた狭い路地を暫く進み、そこを抜けると少し開けた場所に出る

そこに一つだけ見た目はアンティーク店のような趣ある建物があり、その中へ入った

カランコロン

軽快な音と共に足を踏み入れると、外観とは裏腹に、昼間から老若男女問わず多くの人が飲んだり食べたり歌ったりと…どんちゃん騒ぎをしている


「………」

この期待を悪い意味で大きく裏切ってくれるのはこの国でこの店だけだと思う

溜息をつきたいのをこらえて、近くのカウンターへ近寄ると、バーテンダーの服装をした一人の強面の壮年の男がグラスを拭いていた


「ヴァンさん、終わりました」

「ん?ああ、リィナか」

ヴァンは顔を上げ、少女…リィナの顔をアメジストの瞳に映すと厳つい顔を綻ばせた

ヴァンはこの酒場の店主であり、このネックレスの依頼者でもある

ちなみにヴァンはリィナのお得意様だ

リィナは徐にポケットから頼まれた品を取り出すと、カウンター越しでヴァンに手渡した

「ん、確かに受け取った。お金はお前の家に送ってるから後でみるといい。ところで、飯はいるか?」

「…いる。」

丁度お腹を空かせていたリィナはコクリと頷き、少し背伸びをして椅子に座ると羽織っていたフードのついた黒い布をのけた

ふわりと白雪の髪が揺れ、次に小さな顔が露わになる

髪色に近いくらいの色白の肌、長い睫毛の下からのぞく大きなトパーズの瞳、すっと鼻筋が通っており、口紅を塗ったかのような真っ赤な唇。その容姿は人並み外れた精巧な人形の様で、酒場にいた人達は皆彼女を見ると一瞬言葉を失った

「…お前、相変わらずだな」

「…?とりあえず肉料理で」

はいはいと苦笑いを浮かべると、ヴァンはカウンターの下にある冷蔵庫から食材を取り出すと早速調理に取り掛かった