「そろそろ構わないと思ったからだ。カノンの街で数年経ったが大分街の皆と馴染んだ。まぁ多少沸点は低いが喧嘩をふっかけられても軽く流せるようになった。私は人前に出ても笑われない程度にはお前を躾けたつもりだ。

だから、次はもっと視野を広げてやろうと思ってな」

視野を広げる…?

「この世界はお前の知らないことだらけだ。その国の人の様子、周りの環境、様々な情報を集め、何が自分にとって有益なのかよく考えるんだ。



もし、その土地が気に入ればそこに留まっても構わない」

突然リィナさんに突き放されたように感じて、思わず頭がカッと熱くなる

「な……⁉︎俺はずっとリィナさんの側にいますよ!絶対に!」

「もしもの話だ。だが、頭の片隅に置いておけ、私は人間だ。獣人と違い寿命が短い。何時迄も一緒にいれるわけではない」

前を向いたままのリィナさん。いったいどんな顔をしてその言葉を言っているのだろうか

「そんなの…」

わかってる…分かってますよリィナさん

数ある種族の中で一番短命なのは人間だということ。比べて獣人は寿命が200年以上あり、俺は人間で言うと20歳くらいだ。

なんて人間という種族は儚い生き物なんだろうか…

「リィナさんが俺と同じ獣人だったら良かったのに」

そうしたら、もっと長く一緒に居られるのに

「………」

リィナさんは俺の小さな呟きが聞こえたのかこちらを見て薄く微笑むだけだった