白い雛鳥


それに…とネルはリィナさんの方を見てニヤリと笑い

『リィナちゃんだってこれくらい朝飯前でショ?私、魔力には獣人一倍敏感だから分かるんだけどリィナちゃんは私より魔力多いし、回復も早いし…そもそも人間なの…って痛い痛いリィナちゃん!』

「痛くしてるんだ馬鹿者。全く…獣人はみんな口がふにゃふにゃなのか」

「…リィナさん?」

無言でネルの耳を引っ張るリィナさんになにか聞かれてはマズイことがあるのだろうかと首をかしげる

『ありゃ?シノ君には言ってなかったのネ?それだけ信頼してるのに何故なノ?』

リィナさんの顔がわずかに曇る

「私でさえ自分がよく分かってないからだ。それに、これはあくまで推測にしか過ぎない。全てを知っているのはあの男だけだ」

「あの男って…」

リィナさんをここまで教育し、育てた人

彼がなんの仕事をしていたのか、何故リィナを拾い、そして再び置いて行ったのか。全てを謎に包んだまま姿を消した


「…この話はもう終わりだ。ネル、ユングを」

『もう、リィナちゃんそーやってすぐはぐらかすんだかラ!いつかはちゃんと話してあげなヨ!』

今から連れてくるから待っててと近くのドアに消えていった

「……」

ドアの向こうってどうなっているんだろうか

好奇心で隣にあった青色のドアを開けようと手を伸ばしたらすかさずリィナに手を掴まれる

「やめておけ。無断でネル以外の者が入ると二度と出てこれない異空間へ飛ぶようになってる」

「え…」

サァーっと血の気が引いてリィナが手を離した瞬間、思わずドアの前から飛び退く

「クスッ…冗談だ。精々地下の牢屋に入れられるくらいだろ。お前は意外と臆病だな」

「な…リィナさんがそんな真面目な顔で脅すからですよ‼︎」

クスクスと笑うリィナさんにホッとする


リィナさんはあの人の話を極端に嫌うからあの人と数十年間どんな生活を送っていたのか知らない

俺の知らない一面を知っているあの男にモヤモヤとした感情が渦巻く

「…いつか話してくれますか?」