『…ガッカリだ。随分と腑抜けた野郎に成り下がったもんだな』
『腑抜けは貴方でショ?いい加減に頭にきちゃっタ』
静観を貫いてきたネルが突如後ろから現れ、熊の胸倉を片手で掴み持ち上げる
獣人の中でも華奢な方の彼女が大柄の奴を持ち上げる姿は流石ここの長を務めるだけの事はあると言うべきか
『ぐっ…』
『どうしてあんたはいつも人を見下した言い方しか出来ないノ?彼女達は私の大事なお客様。それ以上言うと骨の二、三本くらいイっちゃうカラ』
『あ……す…』
ニコリと笑う彼女に熊は身震いし、恐怖の余りうまく言葉が出ない
「ネル。先を急いでいるんだ。早く門を開けてくれないか?」
流石にこんなとこで死人を出す訳にはいかない
後処理的な意味で
『…ん?ああ、ごめんネ。すぐ開けるカラ』
パッと手を離すと熊は重力に従いストンと落ちる。奴は軽く放心状態なのか身動き一つしない
…ネルを怒らせるのはやめよう
ネルは軽い足取りで近くにある複雑そうな機械を慣れた手つきで操作させると、ゴゴゴ…と身体に響く程の重低音が鳴り、目の前の門がゆっくりと開く
ネルに続いて少し歩くと施設の中につながる巨大な扉に出くわした
『さあ、どうゾ♪私のお城へごあんなーイ☆』
先ほどの怒りは何処へやら、クルリと一回転して可愛らしい笑みを浮かべる彼女に私も呆れたように小さく笑みをこぼした

