『事実を言って何が悪い。なぁシノ、お前こいつにかなり毒されてるぞ?、カノンにいた頃のあの勇ましさは何処行った?俺はあの頃のお前が憧れだったというのに』
「………ッ」
『もう腐った街を壊しに行かないのか?気に入らない奴らを死ぬ寸前まで甚振らないのか?なぁ、今度は俺も混ぜてくれよ』
「や…め」
早く目を覚ませと強く肩を掴まれ、思わず身体を固くするシノを見て、私は小さく息を吐く
獣人の中にはこの門番のようにかつての暴君シノを英雄のように扱う者がいる
恐らく、あの何者にも囚われず、確固たる信念を持っていた彼に何かしらの希望を持っていたのだろう
まぁ、私からしてみれば唯の我儘野郎なんだが
「シノ」
今のお前はどこにいる。お前の居場所はもうそこじゃないだろう
「…リィナさん」
ぼんやりとしていた視線はやがて銀色を捉えるとハッと我に返り門番の手を勢いよく振り払う
瞳には再び生気が宿っていた
「俺は今の自分に満足しています。それに、あの日から彼女に一生を懸けて恩返しすると約束しました。後悔はしてません。俺が、彼女を必要としているから」
それだけ言い捨てるとシノは私の元へ来て服の袖を握りしめる
チラチラ見てるし尻尾を振ってるから褒めて欲しいんだと思うが当たり前だと見ないふりを決め込んでおく

