申し遅れたが、私はリィナ。
何でも屋をしてる…とでも今は言っておこう
どこからかくる依頼をこなし、それに見合った報酬を受け取って生活をしている
家族はいない。というか分からない
私が赤ん坊の頃に土砂降りの雨の中に放り出されていたのを、ある男に拾われて育てられた
男は自分の持つ知識を全て叩き込むと私が物心ついたころに放り出し、今に至る
男の知識は一般的なものはもちろん、戦闘に必要な武術、戦術、航海術など、普通の人では知らない知識も与えらた。そのお陰か今の職業についているのだけれど、私は名前は勿論、顔もうっすらとしか覚えてないあの男が嫌いだった
何がきっかけなのかは分からないが、とにかく大嫌いなことは間違いない
とりあえずこの話はもう良いだろうと置かれていたジュースに口付けコクリと一口飲んだ
甘酸っぱい果実の風味が口いっぱいに広がり、思わず顔が緩む
周りの者はその天使のような微笑みに心臓を鷲掴みにされ、バタバタと倒れていくが、リィナはどこ吹く風といったところだ
「…ったく、リィナはその自分に無頓着なの直したほうがいいぞ。普段は無表情だから特にな。はい、俺特製ソースをかけた特大ステーキと、ご飯大盛り」
どんっと置かれたのは鉄板に乗った熱々のステーキ。美味しそうなスパイスの効いたソースの匂いが食欲をそそる
「ん…いただきます」
自分の容姿はよく理解している。仕事では武器になってるし。ただ、一々反応するのが面倒なだけである
ついでにそれをヴァンに説明するのも
リィナは取り敢えず頷いておき、ナイフとフォークで目の前におかれた大きな肉の塊をガツガツ食べていく
この街で採れた様々な香草を合わせたソースが香ばしい肉とかなりマッチしてて彼女は幸せそうな顔を浮かべる
それから一言も喋らず、彼女はただ黙々と口と手を動かした
小柄な身体に見合わず人の倍以上は食べるリィナはヴァンの店で依頼を他より安く受ける代わりにご飯をお腹いっぱい食べる権利を貰っている
ヴァンはその光景に毎回驚かされるが、自分の作った料理を美味しそうに食べる彼女をコッソリ見てはカメラに収めるのが習慣だ
依頼を頼むのもリィナの顔見たさが目的の半分以上を占めている位リィナ大好き人間で、勿論、少女は気付いているが、ヴァンの作る料理は結構気に入っているため見て見ぬ振りをしている

