不審がる一也を適当に誤魔化し、一也が熱心に見ていたスマホの画面を覗き込む。
「何見てたの?」
さっと隠そうとしたのを掴んで止めると、諦めたように渡してくれる。
「ん?ゲーム?」
「そ、ブラウザーゲーム」
カラフルな画面で小さな人のようなものが動いていた。
「へえ?ゲーム好きなの」
意外だ。
「いや、こういうのひかるが好きなんだよ。面白いからヤレって煩いからさ。俺はハマってるってほどでもねぇんだけど、ちょっとした時間潰しにはな」
「ふぅん。どうやるの?」
わりと学生としては勤勉に過ごしてきたあたしは、こういった遊びに馴染がない。
荒れていた時を除けば、学校が終わればうちの店の手伝いをしてた。
店の手伝いを免除されてた頃には宿題や自習をすればもう寝る時間だったし、熱血には程遠いくせに部活をしていたことさえもある。
「直接画面に触れて、指示出すんだよ。で、ここにサイドバーが出るから」
対面側に座って覗き込んでいたのに、いつの間にか一也が回り込んで来て、肩を寄せ合い隣り合って説明を受ける。
「わっ、動いた」
「そりゃ、動くだろ」
熱心に教えてくれる横顔を、いつのまにか見るともなしに見てしまっていた。
睫毛長~。
鋭い顔立ちしてるからとっつきにくいけど、愛想が悪いわけでもないんだな。
あたしの視線に気が付いた一也に、なに?と目で問いかけられて、曖昧に笑って首を振る。
いやいや、あたしってけっこうこいつの顔好きでしょ。
自分で自覚しても、本人に言えるわけがない。
別にメンクイのつもりはなかったんだけど、目に嬉しい美形っていうのもあるんだよね。
誤魔化して、ゲームの内容を振る、
「これってもしかして、画面の向こうにも人がいたりするんだ?」
「ああ、対人てやつだからな」
あーだ、こーだと一也の指示を受けてやってみたり、一也が動かすところを見て歓声を上げたり、気が付けばあっという間に時間が過ぎていた。
隣に新しいお客さんがやってきて、ウェイトレスが応対するその気配でふと気が付く。
ゲーム画面の上の方。
時計が示す時刻はすでに、このカフェに来てから数時間はすぎていた。
一也もあたしの視線の先、時計を確認したのか、見合わせた顔はお互いに帰る時間に気が付いた小学生によく似ていたかもしれない。
「…この後、夕飯も外で食って行こうぜ」
「ダメだよ。もう十分に息抜きしたし…今日は帰ろう」
別段、夕食くらい食べて行っても良かったのかもしれない。
けど、なんだか、グッと近づいてしまったようなこの雰囲気を継続してしまうのがあたしは怖かった。
目の前の彼は、単なる『婚約者』という名の他人で、お互いに許容しあうだけの関係が一番いいと思っていたのに。
いつまでも腰を下ろしたまま留まっていそうな一也を促して、あたしは脇に背もたれにかけてあったコートを手に立ち上がった。
ヒラリ。
「おい、なんか落ちたぞ」
「何見てたの?」
さっと隠そうとしたのを掴んで止めると、諦めたように渡してくれる。
「ん?ゲーム?」
「そ、ブラウザーゲーム」
カラフルな画面で小さな人のようなものが動いていた。
「へえ?ゲーム好きなの」
意外だ。
「いや、こういうのひかるが好きなんだよ。面白いからヤレって煩いからさ。俺はハマってるってほどでもねぇんだけど、ちょっとした時間潰しにはな」
「ふぅん。どうやるの?」
わりと学生としては勤勉に過ごしてきたあたしは、こういった遊びに馴染がない。
荒れていた時を除けば、学校が終わればうちの店の手伝いをしてた。
店の手伝いを免除されてた頃には宿題や自習をすればもう寝る時間だったし、熱血には程遠いくせに部活をしていたことさえもある。
「直接画面に触れて、指示出すんだよ。で、ここにサイドバーが出るから」
対面側に座って覗き込んでいたのに、いつの間にか一也が回り込んで来て、肩を寄せ合い隣り合って説明を受ける。
「わっ、動いた」
「そりゃ、動くだろ」
熱心に教えてくれる横顔を、いつのまにか見るともなしに見てしまっていた。
睫毛長~。
鋭い顔立ちしてるからとっつきにくいけど、愛想が悪いわけでもないんだな。
あたしの視線に気が付いた一也に、なに?と目で問いかけられて、曖昧に笑って首を振る。
いやいや、あたしってけっこうこいつの顔好きでしょ。
自分で自覚しても、本人に言えるわけがない。
別にメンクイのつもりはなかったんだけど、目に嬉しい美形っていうのもあるんだよね。
誤魔化して、ゲームの内容を振る、
「これってもしかして、画面の向こうにも人がいたりするんだ?」
「ああ、対人てやつだからな」
あーだ、こーだと一也の指示を受けてやってみたり、一也が動かすところを見て歓声を上げたり、気が付けばあっという間に時間が過ぎていた。
隣に新しいお客さんがやってきて、ウェイトレスが応対するその気配でふと気が付く。
ゲーム画面の上の方。
時計が示す時刻はすでに、このカフェに来てから数時間はすぎていた。
一也もあたしの視線の先、時計を確認したのか、見合わせた顔はお互いに帰る時間に気が付いた小学生によく似ていたかもしれない。
「…この後、夕飯も外で食って行こうぜ」
「ダメだよ。もう十分に息抜きしたし…今日は帰ろう」
別段、夕食くらい食べて行っても良かったのかもしれない。
けど、なんだか、グッと近づいてしまったようなこの雰囲気を継続してしまうのがあたしは怖かった。
目の前の彼は、単なる『婚約者』という名の他人で、お互いに許容しあうだけの関係が一番いいと思っていたのに。
いつまでも腰を下ろしたまま留まっていそうな一也を促して、あたしは脇に背もたれにかけてあったコートを手に立ち上がった。
ヒラリ。
「おい、なんか落ちたぞ」

