「…何って、なに?」

 「はあぁ?そんなボケ…って、やめてよっ!」




 のしかかってきた大きな体があたしの四肢を抑え込み、いきなり冷たい手がブラウスの裾から入り込み、その下のキャミソールを潜り抜け、素肌を撫でさする。


 ザァッ、とその感触に鳥肌が立つ。


 こいつ、レイプするつもりだっ!


 じょ、冗談じゃないわよっ。 


 とっさに蹴り上げようと上げた足も、予測されていたのか、手で押さえられてまともにヒットしない。


 て、手慣れてるっ!?


 多少は興奮しているみたいだけど、どこまでも冷たい目が怯えるあたしを見下し、淡々と衣類を剥ぎ取ってゆく。 




 「お前、俺にあてがわれた女なんだろ?どの道、結婚するんだ。どうせ初めてでもあるまいし、カマトトぶってもしょうがねぇだろ」 




 初めてでもあるまいし…。


 けっこうガツーンときた。


 まあ、そりゃそうだ。


 結婚するっていうのも本当だし。


 いきなり初対面でこの展開は予想してなかったけど、言われてしまえばその通りで…。


 なんだか急に抗う気力がペシャンコに失せて、あたしは徐々に力を抜く。 


 …これも義務の一つだと思えば、どうということもないよね。


 なんだか遣る瀬無い気もするけど、どの道、この結婚に初めから何の期待も抱いていないし、かといって不幸のどん底と自虐するつもりもない。


 冷たい氷を胸に押し込まれたようなキーンとした鈍い痛みに、ギュッと目を瞑る。


 こんなん、犬に噛まれたと思って、マグロみたいに横たわっている間に、チクッと痛いのを我慢すれば…。


 すれば…て、こんなデカイ図体の男だもん~、チクッとどころか相当痛そうだよ~~。


 生理的な恐怖に体が強ばって、震えてくるのを止められない。


 すると、存外に優しい手が、頬を撫でた。




 「…大人しくしてれば、別に乱暴にする気もねぇし。お前も楽しめよ」