Sweet Honey Baby

 「おい?」

 「あ、うん。あんたって、何着てもカッコイイんだもん。似合う似合わない以前に、どれ着てもそれなりに様になってるし」

 「…それなりってなんだよ、それなりにって」




 お金は持ってる、頭はいい、顔もスタイルもいいとなったら女の子にだってモテるだろう。


 それなのに、なんだかいつも苦虫を潰したようなつまらなそうな顔をしている理由があたしにはよくわからない。


 あ、でも、いまはちょっと嬉しそうか。




 「ねえ、悪いけど先に行っててくれない?休憩しようって言ってたでしょ?」

 「は?なんだよ、待ってるって」

 「お手洗い。察しなさいよ」




 本当はお邸を出る時に、あらかた絞り出してきたんだけど、今は目の前の男を追い払いたかったので、言い訳に採用。


 さすがに納得せざる得ないよね。




 「……向かい側の、カフェにいるから、わかんなかったら電話しろ」

 「うん、わか…」

 「「…あ」」




 いまさら気が付いて、二人同時にハモってしまった。




 「って、あたしあんたの携番知らないけど?」










 なんだかどさくさで携番とメアドを交換し、一也を追い払った後に、ショーケースのブツをゲット。


 服の一着も、あたしのものを買ってもらったお礼にプレゼントしようと思ったんだけど、0の桁が半端なかった。


 まあ、それでもあたしも高校生ってわけじゃない。


 少し前までバイトもしてたし、散財する方じゃないからそれなりに貯金もある。


 けど、まとめてカードで支払っている一也を前に、これだけとか、言いにくい。


 …こいつにとって、一着や二着、あたしが今更払ってもな、という気持ちもあったし。


 で、通りすがりに目に留まったキーホルダー。


 家の鍵はたぶん、こいつは持っていない。


 かくいうあたしも持たされておらず、つーか、常時誰かしら使用人が邸の中にいて、鍵をかける機会など滅多にないに違いない。


 そんな境遇の人間がもっているバイクのキーが、不思議にあたしの印象に残っていて、一也って身の回りのものにはオシャレなのに、不思議に携帯とかキーにはなんの飾りもつけてなかった。


 まあ、ストラップとか携帯につけない男の子ってけっこう多いし、そういう意味で思いつきもしないのかもしれないけど。


 でも、鍵とかそのまんまだとポケットやカバンに入れた時に探しづらいし、飾りがついていた方が楽しい!…かえって邪魔か。


 悩むと何もあげられなくなるので、とりあえず自己満足でもいいやと、購入。


 キーホルダーとかなら、そんなに重い意味にとられないしね。


 人に何かをあげるって、たとえ恋人とかじゃなくっても楽しい。


 わくわくした気持ちで店を出て、一也が待ってるはずのカフェを探した。




 「…あれ?もしかして、ミカちゃんじゃない?」