Sweet Honey Baby

 なんだか選んでいるうちに、あたしの方がけっこう燃えてしまった。


 あんまり他人に自分の好みを押し付けるのは好きじゃないんだけど、コートを選べば、セーター、セーターを選べばシャツ、シャツを選んだならスラックスと、結局一通りセレクトすることに。


 …やっぱ、スタイルがいい人って何を着ても似合う。


 変な言い方だけど、お金持ちのオジサンが女の子を自分好みに仕手てあげたがるというのを聞いたことがあったけど、そういう気持ちがちょっとわかった。


 あたしたちの場合、お金持ちなのは一也の方で、あたしが選んだものも結局お支払いは彼だったけど、それでもあれもこれもと、着せ変えさせても、嫌がらずにあたしの選んだものを身に着ける一也は、とても高校生とは思えないほどに大人っぽくてカッコ良かった。


 店内の店員さんたちの目も釘付けで、あたしの服を選んだ時のように店内の奥の特別室でのやり取りじゃなかったから、時折訪れるお客さんの黄色い声も聞こえた。




 「…ん~、なんていうか、世の中っていうのはつくづく不公平にできてるって実感した」




 買い物を終えての感想。


 カードでの支払いを終えると、一也が荷物はお邸に一括して送ってくれと依頼している。


 それならついでにあたしの靴も送ってくれればいいのに。


 そう頼んだら、




 「一つくらい手に持ってないと、買物したって醍醐味がねぇだろ?」




と、断られてしまった。


 意外に変なこだわりを持った男だ。


 あたしにしたら、手荷物は一つでもない方がいいと思うんだけど。




 「まあ、あんたが持ってくれてるんだから、あたしは別にいいけどね」




 大して重くもない荷物をわざわざ男に持たせるなんて、それだってあたしのガラじゃないんだけど。




 「女に荷物なんて持たせるかよ」




 そう言いきられてしまえば、争ってまで逆らいたいことじゃなかった。





 「で?何が不公平にできてるって?」




 行くぞという風に、顎をしゃくられて店内を出ようとして、ふと通りすがりしなのショーケースに目が留まった。 


 あ…、これいいかも。