Sweet Honey Baby

 隣を歩く男は、やっぱり思いっきり目立ってた。


 モデル顔負けのスタイルに、整った美貌、高校生には見えない雰囲気が、通りすがる女の子たちの目をくぎ付けにしていた。


 ショーウィンドーを覗き込むあたしの後ろで、ポケットに片手を入れて立ってるだけなのに、それだけでもう絵になってる。


 飾ってある靴を覗く振りで、退屈そうに欠伸をかみ殺してる男の横顔をじっくりと観察した。


 ガラスに映った当の男は、最初、よもやあたしに観察されているとは思ってもいなかったみたいで、髪をかき上げ「早くしろよ~」的に退屈そうな顔をしていた。


 けど、つまらないならつまらないで、周りでも見て退屈を紛らせばいいのに、チラリチラリとあたしへと視線を向けて、そのたびにちょっとだけ口元を綻ばせたりしていた。



 「…なんだよ」




 さすがに気が付くよね。




 「なにが?」

 「靴見てんのかと思ったら、何俺見てんだよ」




 何度目かのチラ見で視線がバッチリ合ってしまって、そこであたしの一也観察会は終了。




 「えー、あんたはあまりにカッ…」

 「…心にもないおべんちゃらは、もういいから」

 「ははは」




 読まれている。




 「いや、つまんなさそうなのに、なんであたしになんか付き合ってるのかなって思ってさ」

 「はあ?お前がショッピング付き合えとか言ったんだろ?」

 「まあ、そうなんだけど」




 だからって、どうせ途中で飽きて、自分の行きたいところへでも無理矢理引きずって行かれるんだろうって、そう思ってたんだよね。




 「…だいたい、ショッピングとかいってお前さっきからなんなんだよ。ウィンドーから眺めるばっかで、ちっとも店入らねぇじゃん」

 「ん~、そんなこともないんだけど、この変ってちょっと敷居高くない?」




 いわゆるブランドショップというお店ばかりで、一介の女子大生がおいそれと買えるような値段帯じゃなかった。


 まあ、そもそも、必要なものはすべてお邸に揃えられてるし、欲しいものがあるわけじゃない。


 あたしも年頃の女の子として、それなりに買い物も好きだけど、着ていくところもなければ、見せる相手もいない今の状況で、必要以上の物を欲しいと言う欲求はあまりなかった。