Sweet Honey Baby

 「あ?」

 「あんたが午後の授業の先生にかけあってくれて、自由時間をもぎ取ってくれたらね」




 とたんに広がった嬉しそうな顔が子供みたいで。


 ちょっとちょっと、それって反則なんじゃない?と思いつつ、嫌な気分じゃない。


 なんなんだろうね、こいつ。


 友達そんなにいないわけ?…そんなわけないか。


 でも、こいつといることが案外嫌じゃなくなってる自分が、少しだけ怖い。


 弟。


 そう。


 血のつながった異父弟っていうやつはいるけど、全然接触したことがなくって実感なんかなかった。


 きっとその弟ってやつを重ねて見ているんだと自分に言い聞かせて、あたしは小さく溜息をついた。










 「…なんだよ、バイクじゃダメなのかよ」

 「あたし、タンデムとかって嫌いだし、寒いの嫌い」




 当然のように磨き立てたバイクの後ろに乗せられそうになったのを、断固拒否して車の中。




 「ていうか、なんで車?電車でいいじゃん」

 「はあ?そんなかったるいもん乗ってられるか。家に車いくつでもあんのに、なんでわざわざそんなもんに乗らなきゃなんねぇんだよ」

 「…あ、そ」




 この贅沢者め。


 これだから金持ちのお坊ちゃまは。


 学校に車で送迎っていうのもあたしにとっては異世界だけど、こいつほとんど自分の足で歩くってことを知らないんじゃないのかな。


 無駄に長い足して、運動能力も高そうなスタイルしているのに、案外張りぼてのトラで、運痴とか?


 ジロジロ上から下まで眺めてやったら、ん?と見返された。




 「…なんだよ」

 「いや、ミホレテテ…」