Sweet Honey Baby

 それを言うのなら、このお邸のシェフさんが作るスウィーツも十分美味しいので、どう釣られて良いのやら…。




 「女って甘いもん好きなんだろ?」

 「…そりゃあ、そうだけど」

 「お前、なんだかほとんど邸から外へ出ないみたいだし。俺と一緒なら、家庭教師どもも文句言わねぇから、連れていってやるけど?」

 「うーん」




 それはちょっと気が惹かれる。


 さすがにあたしも、こうも毎日お邸に閉じ込められての勉強三昧は身に応える。


 かといって、昔のように友達と無軌道を繰り返すわけにもいかないし、だいたいそんな友達はもう身近にいなかった。


 それを考えるとあたしって、友達、少っ!とか思うけど、まあ、それが大人になるってことなのかな、とも思う。


 大学の友達には、こういう状況なのでおいそれとは連絡とれないし、本当は気晴らしにウィンドショッピングにでも行きたいところだけど、男の子と行ってもあまり楽しそうじゃないしな。




 「ね、猫グッズの専門ショップによってやってもいいぞ」

 「はい?」

 「日暮里の方に、猫好きが集まる店があるとかで、女どもの間で人気あるそうだぜ」




 …どっからそんな情報仕入れてくるんだろ、こいつ。


 女にはまあ、手も早いし手馴れてるみたいだけど、見た目硬派な美形気取ってて、そんなに女の子と慣れあってる感じじゃないのに、それなりによろしくやってるってことなんだろうな。


 ちょっと胡乱な目で見てしまったのがわかったのか、




 「な、なんだよ」

 「いや、別に。あたしそんなに猫好きってわけじゃないんだけどな、とか思っただけ」

 「あ?そうなのか?」




 怪訝そうなのはおそらく、あたしが今世話をしている仔猫のことがあるから。




 「あの仔たちは貰い手さえ見つかれば手放す気だし、大学始まったら心当たりもあるから、ずっと飼ってるつもりはない、かな」

 「なんだよ、そのまま飼えばいいじゃん?」

 「…まあ、可愛いけどね」




 ずっと世話してきて情が移らないなんて嘘だ。


 それでも、いまのこの状況だっていったいいつまで続くかわからないし、自分の進退でさえままならないのに、年をとって死に水とるまで…なんて無責任に請け負えない。


 だから、貰ってくれて可愛がってもらえればそれが一番いいんだと思う。


 あとはネタもつきたのか、ジト目であたしを見るだけで、もう誘ってこない一也を後に踵を返す。


 ……。


 ……。




 「なあっ!」

 「…ねえ」




 被った。


 振り返ると、困ったような怒ったような複雑な顔。


 そんな表情してても、こいつって本当にきれいな顔してるんだなあとか、場違いなことを考えた自分がおかしくて、だからつい勢いに乗って口が滑ったんだと思う。




 「ショッピング…気分転換につきあってくれるんだったら、あんたのバイク磨きに付き合ってもいいよ」