パーティの当日、邸内にある専用エステルームでこれでもか!っていうくらいに磨き立てられ、この日の為に選ばれたドレスを身に着けたあたしはまるで別人だった。


 一也のワインレッドのタキシードに色味に合わせたベアドレスで、たっぷりとドレープが入った膝丈のスカート。


 漆黒のボレロと濃いブラウンのバッグ、それにドレスと同色のハイヒールでコーディネート。


 胸元の大きなダイヤとこれってアメジストなのかな?派手なネックレスと頭につけられたカシューシャって、いったいいくらなの?ってくらいに高そうだ。


 色合いはシックだけど、ロングじゃくって、膝丈なのはおそらく年下の一也と年の差が目立たないように、あたしを若く見せたいからなんだろうな。


 …あたし、まだ大学生なのに。


 やっぱり、現役高校生とじゃね。


 溜息。


 エスコートされて、財前家リムジンから降りると、一歩足を踏み入れると、そこには別世界が広がっていた。


 ふえぇ~。


 本当にあるんだぁ、こういう世界って。


 なんだか、同じ日本だということが信じられないくらい。


 どちら様のお宅だか忘れたけど、財前家や門倉のお邸とはまた趣の違う、やたらとデーハー(派手)なお邸は、圧巻だった。


 案内されて、会場だという大広間へと通される。


 デカイ。 


 財前のお邸でも思ったけど、家の中に披露宴会場!?って言いたくなるようなこんなバカデカイ部屋が普通にあるって、なんか凄すぎる。


 日本は中産階級が多くって貧富の差があまりないっていうけど、こういうお宅を見ちゃうとなんだかな、みたいな。




 「…おい、なにキョロキョロしてるんだよ」

 「えっ、…してないけど」




 思いっきりしてました、はい。


 つい物珍しくて、高い天井からぶら下がっているやたらとギラギラしているシャンデリアや、足首まで埋まってしまっている絨毯、人間というよりは綺羅な尾羽を震わせる極楽鳥のような招待客たちを眺め、あたしはポカンと口を開けてしまっていた。




 「…お前、最近まで体が弱くて、ド田舎で育てられてたって本当だったんだな」




 体弱くて…。


 つい自分の頑健な体を眺め降ろしてしまいそうになり、不審な顔の一也の視線に出くわして、ヒクヒクと愛想笑いを返す。


 や、やばい。


 そうだった。


 古い名家の門倉家の娘でありながら、いままで上流階級で顔を知られていなかった理由。


 子供の頃のあたしは虚弱体質で、田舎の親族の家に預けられていたそうな。


 そんな自分でも信じられないようなベタな嘘八百の経歴を、ここに来る前に叩き込まれていたことを思い起こし、はや、もうバレてしまいそうな危険にダラダラ冷や汗を流す。


 …しっかし、お金目当てで喰いついたあたしが言うのもなんだけど、無理ありすぎるよ。


 一見の赤の他人ならいざ知らず、婚約者でしょ?


 将来夫婦になるかもしれない相手をしょっぱなから騙すなんて、罪悪感と言うより、実家からの無理矢理な欲求に改めて頭痛を覚えた。