俺の告白?に、ポカンとした顔が、次に困った顔になる。


 その顔がどう見ても、歓迎しているわけではないのがわかって、俺は意識して皮肉な笑みを浮かべた。




 「バカじゃねぇ。んなわけないって何度言えばわかるんだよ。自意識過剰女」

 「そ、そうだよね。うん、あんたみたいにモテそうな男が、あたしなんかになんてね」




 あはははと乾いた笑いを浮かべるバカ女に、ムカつきを覚える。


 本当は気が付いているくせに、俺に否定して欲しくってあえて聞いてくるズルい女。


 バッカじゃねーの。


 俺がお前のこと好きかって?


 …俺だって、本当のところはわかんねぇよ。


 でも、気になるんだ。


 気になって仕方がねぇ。


 顔を見れば近くに行きたくなって、声を聞けばもっとお前のしゃべる声を聞きたいと思う。


 …以前はベッドに強引に引きずり込んだこともあったのに。


 いまはドキドキして、簡単にはこいつに触れることができない。


 もう女になんてマジになったりしねぇって思ったのにな。


 惚れて惚れて、惚れまくった女に裏切られた時に、そう思った。


 それなのに、まさかあの女が押し付けてきた婚約者とやらに惹かれちまうなんてな。


 おかしすぎて、崇史やひかるにだって知られたくなかった。


 特に俺からの好意を気が付かないふりで、拒絶したがっているこの女には。


 死んでも絶対に俺からは言ってやらねぇ。




 「じゃあ、あんた暇なの?」

 「…偶然だ。だいたいここはどこもかしこも俺んちなんだ。どこで何をしていようと、俺の勝手だろ?」

 「まあ、そりゃそうだけどさ」




 釈然としない顔で首を傾げる女に向かって、俺のとっておきの顔で微笑んで誘惑してやる。




 「…この後、出かけるからお前も一緒に来いよ。バイクで風を切るってすげえ気持ちいいんだぜ」

 「はは…本当だね、気持ちいいよね。でも、午後からも授業あるっていつも言ってるでしょ?」




 そう言って毎度断られるのもいつものことで。


 断るのはお前のくせに、そんな名残惜しそうな顔で俺のバイクを見てるんじゃねぇよ。


 俺が後ろに乗せたいのなんてお前くらいなのに。


 そうあっさり断られちゃ、俺の立場もないだろ、


 お前はいったいどんな女なんだよ。


 親の言うままに俺のところへやってきて、俺が体を求めれば平然と応じる。


 それなのに、まるで水を含んだスポンジのように。


 押せば凹むのに、離せば戻ってしまい、けっして自分を変えない女。


 いまの俺にとって唯一解けない謎は、堕ちて来ないくせに屈託なく笑いかけてくる目の前の女だけだった。