Sweet Honey Baby

 「あんたって、学校の成績、何番くらいなの?」




 答えないかなあとは思いつつ。


 これだけ勉強してるんだったら、校内ベスト10くらいに入ってないとやってられないだろうと思ったんだけど…。




 「2番」

 「…へ?」

 「だから、前回は2番。その前は久々に1番とったんだけど、今回負けると卒業式の答辞には間違いなく立てねぇから、焦るよな」

 「……はあ、さようですか」




 そうと言うしかない。


 こんなデカイ家に、腐るほどのお金。


 超絶整った顔に、モデル並みのスタイル。


 性格はアレだけど、犯罪起こすほどじゃない(レイプは犯罪か?)から、それも好みの問題だよね。


 これで頭も良くってって、こいついったいどれだけ天から二物も三物も与えられてるんだろうって思う。


 うわあ、平凡な一般庶民としては、なんだかちょっとムカつくって言うか、嫌味な奴~。


 これじゃあ、自分に自信満々で、人を人とも思えないくらいに傲慢になってもしかたないかもしれないな。


 ……ますます、こいつと結婚とか、実感がわかない。




 「あ、俺の部屋ここ」




 気が付けば、目的地に到着していたらしい。


 熱い吐息を吐いている一也を奥のベッドに横たわらせ、体温計をメイドさんに持ってきてもらおうとしたけど、止められる。




 「いい…。他人が入ってくるのうざったい。それより、ちょっとひと眠りする」

 「ああ、それがいいよ。風邪薬飲んだ?」

 「…飲んでねぇ。医者の処方した奴じゃねぇと飲まねぇし、ただでさえ怠いのに眠くなるからごめんだ」

 「…そんな場合じゃないと思うけどねぇ」




 頑固そうな横顔を見ていると、いくらあたしが言っても聞きそうにない。


 しかし、薬は飲まない。


 他人を寄せ付けないって、こいつは野生の獣か。


 なんだかお坊ちゃまのイメージとかなり違う。




 「じゃあ、せめて多少はお腹に何か入れてから寝なよ」




 時計を見ればちょうど、12:00になるところだ。


 まさかもう昼食食べたとかってことないよね。


 いつまでもくどくど言い募るあたしにうんざりしているのか、溜息をつく。


 それでも邪険にしたり、出ていけって言わないのは、多少は人恋しさもあるのかな。


 病気になると、気が弱くなるよね、どうしても。


 チラッと横目で見る一也の目が、どこか揺れていてあたしが出て行ってしまうのを恐れているようにも見える。


 もちろんそれさえもあたしの勘違いで、実は煩い女は早く出ていけって思っているのかもしれない…思ってたら、速攻怒鳴られそうだけどね、こいつのキャラじゃ。




 「…そこの引き出し開けて?」

 「え?ああ、うん」




 指示されて開けてみると、錠剤のボトルがいくつか入っている。




「なんだ、薬あるんじゃん…って」