Sweet Honey Baby

 そういえば、ここのところ一也をみない。


 別に見なければ見ないで、どうってことはないんだけど、一時期毎日のように見かけたデカイ男を見ないと、それはそれでなんとなく寂しい気がする…一応婚約者だし。


 …まあ、気がするってだけで、それであえて会いに行こう(同じ家に住んでてこれもある意味凄いけど)って気にはならないんだけどね。


 ところが、「ま、いっか」とスッパリ脳裏から捨て去った途端、その当の本人に出くわしてしまった。




 「…なにやってるの、あんた?」




 つい、マジマジと見下ろしてしまう。




 「あ?見りゃわかんだろ」




 まあね。


 ソファーの上に大の字に転がって、頭には手をやって目を瞑ってる。


 ここも中々豪奢な部屋で、居住環境は快適そうだけど、それでもあんたの立派な寝室には叶わないだろう…寝るには。


 しかし…。




 「ねえ、具合、悪いの?」




 なんだか顔色が良くない。


 暑くもないのに汗をかいてるわりには、顔色は青くて。


 いつもは憎たらしいほどの威圧感を周囲にはなっているのに、不思議にあたしの部屋にいる仔猫たちより頼りない気がした。


 返事がないのにジレて、微動だに動かない一也に歩み寄る。




 「…触んな」




 額に伸ばした手を叩かれ、睨む潤んだ目に確信した。




 「あんた、熱あるでしょ?なんだってこんなところで寝転がってんのよ」

 「…かまうなって、言ってんだろ。うぜぇから、さっさと行けよ」




 うぜぇ…そこまで言われて構う義理もないけど。


 こうやって見てしまった以上は放っても置けない。




 「目障りなのよ。そんないかにも具合悪い顔して、こんなところに転がられてたら。煩いのが嫌だったら、さっさと自分の部屋に行って寝てなさいよ」




 溜息一つ。


 そのまま煩く居座られて構われ続けるよりは…とでも思ったのか、緩慢な仕草で起き上がって立ちあがろうとする。


 フラリ。




 「危ないっ!」