つまんねぇ。
俺らの座るテーブルへとチラチラ視線を向けては、もったいぶった笑みを浮かべる女どもにガンをくれて追い払う。
それでも懲りずに媚びる奴らには、
「うぜぇ、散れっ」
襟首掴んで凄めば、さっさと逃げ去った。
「…うぜぇのはてめぇだ。さっきからシケタ面しやがって、酒がまずくなっだろ」
物柔らかな優男面を面倒臭そうに歪めた崇史(たかし)が、俺の頭を叩き、外へ出ろと顎をしゃくる。
「いてぇな。お前はそっちで黙って飲んでろよ」
「黙って飲んでいたいのを、お前が一々騒いで邪魔すんだろ?」
睨みあう俺らの間にドンと腰を下ろし、ニコニコ俺ら二人にひかるが酒を勧める。
「まあまあ、二人ともいがみ合ってないで。もうすぐ学年末試験だろ?どうせ、そん時嫌でも殺伐とするんだからさ。今日は可愛いお姉ちゃんナンパして楽しくやるんじゃなかったの?」
「…ナンパすんのはお前だけだ」
「またまた~。少し前まで千人切りだって吹いてた一ちゃんらしくないじゃない」
フザけた呼び名に足を踏んでやり、痛いと悲鳴を上げさせたひかるの顔は、ニヤニヤと揶揄に満ちている。
こいつも黙っていればアイドル張りの美少年面という奴だったが、その内面は似ても焼いても食えねぇ食わせ者だ。
「そうだな、お前もひかると一緒にナンパでもしてろ。どうせ、俺の勝ちは決まりだ。殺伐とすることもないだろうさ」
フンと鼻を鳴らす崇史の顔が憎ったらしい。
学校では優等生然とクールで鳴らしてるくせに、その実俺ら幼馴染みの中では一番負けず嫌いだ。
「一ちゃんたら、婚約者の君に袖にされっぱなしで、拗ねちゃってんだね」
「…拗ねてねぇ。つーか、関係ねぇし」
なんだ、その婚約者の君つーのは。
変な女が邸に来てるって話をこいつらに話しただけで、『婚約者の君』だ。
まったくひかるの思考回路は俺には理解できねぇ。
「別に今までだって、女は送り込まれてきたんだろ?」
「…だよね~。適当に美味しくいただいて、いままでポイしてきたのにね。って、うわあ、やっぱ一ちゃんて鬼畜」
すっかり『一ちゃん』が気に入ったらしく、ひかるは連呼してきゃあきゃあ言っている。
多少ムカつくが、こいつに何言ってもしょせんは暖簾に腕押しだ。
放置して、目の前のスコッチに手を伸ばす。
「…相変らず、親父くせぇ趣味」
「ほっとけっ」
「お前んちのお袋さんもよくやるよな」
お袋…の下りにギッと睨み据える。
なにが、お袋だ。
そんなんじゃねぇって、知ってんだろうに。
まあ、他に言いようがないだろうからそれも仕方ないか。
わずかな同情が含まれている気がするのは気のせいに違いない。
それでも、銀縁のメガネの向こうにある目が、心配しているのは確かなんだろう。
「…そんなに嫌な女なら、さっさと追い出せばいいじゃない」
「嫌な女…か」
別に嫌なわけじゃない。
むしろ従順だし、特に俺に媚びてくるわけでもない。
顔を合わせようと思わなければ、逆にあっちの方が俺を無視してる。
それがなんだかシャクで、面白くなくって。
女が寄ってくればイラついて、邪険にしてやりたくなるのに、どうでもいいと放置されると気にかかる自分の厄介な気持ちを俺は自分で持て余していた。
俺らの座るテーブルへとチラチラ視線を向けては、もったいぶった笑みを浮かべる女どもにガンをくれて追い払う。
それでも懲りずに媚びる奴らには、
「うぜぇ、散れっ」
襟首掴んで凄めば、さっさと逃げ去った。
「…うぜぇのはてめぇだ。さっきからシケタ面しやがって、酒がまずくなっだろ」
物柔らかな優男面を面倒臭そうに歪めた崇史(たかし)が、俺の頭を叩き、外へ出ろと顎をしゃくる。
「いてぇな。お前はそっちで黙って飲んでろよ」
「黙って飲んでいたいのを、お前が一々騒いで邪魔すんだろ?」
睨みあう俺らの間にドンと腰を下ろし、ニコニコ俺ら二人にひかるが酒を勧める。
「まあまあ、二人ともいがみ合ってないで。もうすぐ学年末試験だろ?どうせ、そん時嫌でも殺伐とするんだからさ。今日は可愛いお姉ちゃんナンパして楽しくやるんじゃなかったの?」
「…ナンパすんのはお前だけだ」
「またまた~。少し前まで千人切りだって吹いてた一ちゃんらしくないじゃない」
フザけた呼び名に足を踏んでやり、痛いと悲鳴を上げさせたひかるの顔は、ニヤニヤと揶揄に満ちている。
こいつも黙っていればアイドル張りの美少年面という奴だったが、その内面は似ても焼いても食えねぇ食わせ者だ。
「そうだな、お前もひかると一緒にナンパでもしてろ。どうせ、俺の勝ちは決まりだ。殺伐とすることもないだろうさ」
フンと鼻を鳴らす崇史の顔が憎ったらしい。
学校では優等生然とクールで鳴らしてるくせに、その実俺ら幼馴染みの中では一番負けず嫌いだ。
「一ちゃんたら、婚約者の君に袖にされっぱなしで、拗ねちゃってんだね」
「…拗ねてねぇ。つーか、関係ねぇし」
なんだ、その婚約者の君つーのは。
変な女が邸に来てるって話をこいつらに話しただけで、『婚約者の君』だ。
まったくひかるの思考回路は俺には理解できねぇ。
「別に今までだって、女は送り込まれてきたんだろ?」
「…だよね~。適当に美味しくいただいて、いままでポイしてきたのにね。って、うわあ、やっぱ一ちゃんて鬼畜」
すっかり『一ちゃん』が気に入ったらしく、ひかるは連呼してきゃあきゃあ言っている。
多少ムカつくが、こいつに何言ってもしょせんは暖簾に腕押しだ。
放置して、目の前のスコッチに手を伸ばす。
「…相変らず、親父くせぇ趣味」
「ほっとけっ」
「お前んちのお袋さんもよくやるよな」
お袋…の下りにギッと睨み据える。
なにが、お袋だ。
そんなんじゃねぇって、知ってんだろうに。
まあ、他に言いようがないだろうからそれも仕方ないか。
わずかな同情が含まれている気がするのは気のせいに違いない。
それでも、銀縁のメガネの向こうにある目が、心配しているのは確かなんだろう。
「…そんなに嫌な女なら、さっさと追い出せばいいじゃない」
「嫌な女…か」
別に嫌なわけじゃない。
むしろ従順だし、特に俺に媚びてくるわけでもない。
顔を合わせようと思わなければ、逆にあっちの方が俺を無視してる。
それがなんだかシャクで、面白くなくって。
女が寄ってくればイラついて、邪険にしてやりたくなるのに、どうでもいいと放置されると気にかかる自分の厄介な気持ちを俺は自分で持て余していた。

