「一輝くん。よく言えました」
ナデナデ、と頭の上を実態のない美咲の手が滑った。
「な、な……なんで美咲がここに!」
寝てたんじゃないのか。
驚き過ぎて、声が裏返った。
にこにこと笑う美咲は、俺を小さい子と勘違いしているような、優しい笑顔を俺に向けていた。
「目が覚めちゃっただけだよ。じゃ、私はもう寝るよ」
「……おう」
「お休み」
「お休み」
美咲は俺に背を向けて、俺の部屋に入って行った。
「……オイ。そこ、俺の部屋…ま、いいか」
何のためらいもなく、俺の部屋に入って行くことに突っ込んだが、美咲は何の反応もなく俺の部屋の扉を通り抜けて行った。
俺も、そのあとを追いかける。
今日はゆっくり眠れそうだ。
そう思いながら、目を閉じた。
