「うん、知ってる。で、朝早くに仕事行くんだよね。ねぇ、母さん。俺さ」
あぁ、今から言うこと、絶対子供っぽい。
やっぱ、言わないでおこうかな。
「なぁに?一輝」
母さんに促されて、口を開いた。
「朝起きて誰もいないのも、一人で食べるご飯も、返事のないただいまも、時々、嫌になるんだ」
「……」
「さみしいよ…母さん……」
言ったことなんて、一度もなかった。
子供の時に、もっと子供らしくわがまま言えば良かった。
「ごめん、ごめんね、一輝。明日。お父さんと一回家へ帰るわ。」
長く聞いていなかった母の言葉は、こんなにも優しかっただろうか。
それから、2、3言話して電話を切った。
