「泣くな!男だろ!」
小さい俺と、初恋の美咲。
近所に住んでいた俺と美咲はよく遊んだ。
好きと自覚してから喋ったのはほとんどないけど、小さい頃はよく遊んだ。
俺の両親は小さい頃から仕事ばっかりで、さみしかった。
今日もやっぱりいつもと変わらず、両親は仕事。
「な、泣いてねーし!」
ゴシゴシと乱暴に目元を拭いて、美咲を睨みつける。
「うんうん。泣いてないね」
同い年のはずなのに、美咲は大人ぶって俺の頭を撫でた。
「それにしても……なんで泣いてたの?」
俺よりも小さい手が、優しく撫でる。
「今日……俺、母さんたちと遊びに行く約束だったんだ」
「うん」
「でも、母さんも父さんも今日はやっぱりお仕事だから無理なの、ごめんねって」
いつだって両親の最優先は仕事で、息子である俺じゃない。
「じゃあ、今日は私と遊ぼ!寂しいなら、我慢しちゃダメだよ!」
にっこりと笑って、美咲が俺に手を伸ばす。
さみしさを埋めてくれたのは美咲。
一緒にいる間は、寂しいこと全部忘れていた。
