幽霊彼女と死んだ恋




弁当を持って、台所の方へ向かう。



「何するのー?」


「洗うんだよ」


「主夫?主婦…んー。どの字かな。まぁとりあえず……しゅふだねー」



「うるせー」


自分でも自覚済みだというのに、そうやって言われるとなんだか恥ずかしい。



「良いお嫁さんになれるよー!」


ぷくく、と笑を堪えきれないとでも言うように、肩を震わせながら言って来る。


「そこはお嫁じゃなくお婿だろ」



「知ってて言ったんだもーん」


「ばか…」


パチャパチャ、っと音を立てて食器と弁当箱を洗う。



…え、食器…?


「朝こんなのなかったのにね」



美咲もそれの存在に気付いたのか、不思議そうに首を傾げた。



「多分、母ちゃんたち俺のいない間に帰ってきたんだろうな。」


「そう、だよね」



ピンク色と青色の食器たちを乾燥機の中へと入れ、スイッチを入れた。


「ご飯だけ食べて、またお仕事行っちゃったのかな」


「そうだろうな」


俺が素っ気なく返事をすると、美咲の表情は曇って行く。



何も感じていないわけではない。

でも
こう言うことには慣れてしまっている。



慣れている…はずなのにな。



「一輝くん…大丈夫?」


「あ…だ、大丈夫」


美咲に顔を見られないように先に走って部屋に戻った。



「なんなんだよ、もう……」



目元を滴る雫。

これは…涙。



「意味わかんねー…」