「幽霊、なのかな?」
…え。
何で疑問形。
「実は…記憶がなかったりするのよね」
記憶が無い。
キオクガゴザイマセン、だと?
「つまり?」
「うん、ここはドコ、私はダレ?状態なのよ」
わかりやす〜く、平た〜く、説明してくださる。
「え?じゃあ、どうするんですか?」
意味なく、言葉が丁寧になった。
「どうしようかなぁ〜」
彼女がニヤッと笑う。
まさか…まさか…。
「取り憑いたりなんかしないから、壁に背中付けるのやめなさい。あと、それ意味ないから」
取り憑く、と言えば背中にでろ〜んを想像していた俺は、無意識に背中を壁にピッタリと付けていたらしい。
背中がゾクゾクと寒い、と感じていたのはただの壁の冷たさだった。
