アイドルなんて、なりたくない<font color=

「本当に、さすが私の孫だわ」

紫が、【私】を強調して言うと

「あら紫、私の孫でもあるのよ」

静が反論する。

紫が、静を見ながら

「腹の中が真っ黒な静の血が流れているとは思えないわぁ」

微笑みながら言うと

「紫だって、十分真っ黒じゃないの」

静が、また反論する。

二人の間に火花が散る。

「まあまあ、二人とも。お茶が冷めてしまいます」

優衣が慌てて二人の間に入る。

「あらまあ、失礼」

紫が優雅に笑い

「早く戴かないと来てしまうものね」

静が謎の笑みを浮かべて言う。

優衣達は、辰之助の事かと思っていたが…

お茶の後に慌てて門からやってくる二つの影を見て

(いつもながら、この二人は底知れない)

微かに恐ろしくなる。

その人物は、息を切らせて

「れ、怜、見つけたわ」

最初の一言がこうだった。

絵里子と隆介だった。

絵里子は、静と紫に気付き

「お母さん、それにお義母様」

完全に声がひっくり返ってしまっている。

「絵里子さん、久しぶりね。あら、それに隆介まで。一体どうしたのかしら」

紫が微笑みながら言う。

これは、一種の恐怖である。