アイドルなんて、なりたくない<font color=

さらりと言う。

「でも、お祖父ちゃんは…」

麻衣が、恐る恐る聞く。

「だって、旦那さまがいたら、むさ苦しくなるじゃないの。せっかくの優雅な時間が台無しだわ」

表情一つ変えずに静が答える。

「確かに、そうね」

紫も容赦がない。

三人の横を冷たい風が吹き抜けた。

(シ、シビア)

三人とも、この二人の恐ろしさは知っている。

(さすが、龍神町の四大賢老だ)

そう思っていると

「さあ、三人とも、早く準備をしてちょうだい」

静に言われて、ハッとしてから、台所に急ぐ。

三人が遠ざかると

「さて…」

静は紫の方に向き返り

「何かイヤな気を感じているのだけど、その事かしら?」

そう問い掛ける。

「あらあら」

紫は、肩をすくめてから

「分かっていたようね」

と言った後、表情を曇らせて

「どうも龍神祭りを汚そうとしている輩がいるらしいのよ」

と言い

「どうも今年の龍神の花嫁に自分の娘を据えようとしているらしいわ」

呆れたように言う。

「またなぜ?」

静の問い掛けに

「《ミス〇〇》みたいなものと思っているのでしょう。勘違いもいいところだわ」