アイドルなんて、なりたくない<font color=

歩く姿勢は、背筋がピンッと伸びていて美しい。

たいがいの人は足を止めて振り返る

【絶世の美少女】

というヤツだ。

だが、この町では、それはない。

みな、優衣は見慣れているから。

しかし、その中身は…

男子顔負けの男勝りな性格で、モノもズバズバ言う。

空手の達人で、ケタ外れの強さ。

町の不良を一日でシメたと言われている。

だからと言って粗暴な訳でもない。

モノの言い方には嫌味はないし、相手が力ずくでこない限り、技は使わない。

性格も優しいので、町の人々から慕われている。

…だが、一部の人には技を使う。

洸太が、いい例だ。

「なあなあ、何でだよ」

あまり、しつこいと

「うるさい!」

と、顔面に正拳づきをくらわせる。

【バタン…ぷしゅ】

倒れて顔面から煙が出てるような洸太を、そのままにして学校に向かう。

その近くでは

「あらあら」

「おやおや」

「松島さんとこの洸太ちゃんたら」

「また優衣ちゃんに、ちょっかいだしとるのぅ」

「しつこい男は嫌われるのに」

「ほんに、しつこい男は嫌われるぞ」

老夫婦が、のどかに会話をしている。