あの出来事があって以来、私は毎日保健室に訪れていた。

「須藤…お前どうした、最近。また保健室だろ」

また、保健室に向かう途中に煉山とばったり会った。賑やかな廊下でもしわがれたその声は届く。

「何かあるのか?あそこに」

あの時煉山が抱いていた猜疑心とは違う、何かを疑う瞳で私を見据える。
別に私はサボりに行くわけじゃないから私は堂々とする。

「落ち着くだけ」

私は自然と笑みがこぼれた。煉山のため息は、今日は廊下の騒がしさのせいか届かない。
保健室の前に立ちノックもせずに扉を開けた。
奥のデスクにはあの男が私を待っていた。

「ありがとう。今日も来てくれたんだね」

なんて言うけど、弁当も食べずに私を待っていたんだから絶対私がここを訪れると分かっていたんだろう。

「本当に、毎日ありがとう。おかげで助かってるんだよ。…いろいろと」

最後の言葉をゆっくりと言った。グラウンドに直接面した保健室は、一枚の扉を隔てても騒がしさがほんのり聞こえる。

いろいろと。

それはきっと私が応急手当の手伝いをしている事だろう。でも、それ以外にも黒山の、何かの支えになれていそうな気がする。

「主とおると不思議と安心するからのう」

僕もだよ。そんな言葉もまたこの室内にゆっくりと溶けてゆく。
黒山の優しい笑顔が、少し恥ずかしくて見れなかった。

私の想いは、なんなのだろう。