「…柚來っ!」
「あらイケメン♡」
「くしゅんっ…」
保健所に着くと柚來がいてくしゃみをしている。
アレルギーの症状だよな。
「ったく。そんなに心配させるなよ」
俺は椅子に座った柚來をぎゅって抱きしめる。
「颯のこと喜ばしたかったんだよ。颯の笑顔見たかったの、修学旅行お礼あげるからって言ったのにあげたいけどあげれなくてお礼って何がいいかって考えたら颯を喜ばせることで…颯、昨日猫と楽しそうだったから…動物園なら喜ぶかなぁって思ったんだよ」
……なんだそれ。
「はぁ~…」
俺は柚來から離れる。
なんだよ、まじで。
俺の喜ぶ姿が見たいとか……
「え、心配して損した!?ごめん…、こんなくだらない理由で颯と動物園に来て迷惑かけちゃって」
「可愛んすぎんだろ…」
別にくだらなくねぇよ。
迷惑なんて全然思ってねぇよ。
「むしろ超嬉しいんだけど」
やばい。
いま俺顔色、異様に真っ赤だわ。
恥ずかしくて後ろを向く。
「えっ。うっ…ん…っ」
柚來の泣き声が後ろから聞こえる。
は?
なんで泣いてんの?
俺気に障ること言った?
「振り向かないでよ。泣いてるのはアレルギー症状だから。別に嬉しいわけじゃないもんっ」
…確かに泣いてる姿は見られたくないよな。
だけどなんでだろう…。
泣き顔を見てあげない優しさより…
「じゃあなんで笑ってんの?アレルギーの症状で泣くのがそんなに嬉しい?」
「だから振り向かないでってば」
「嬉しいくせにばかっ。意地はってんじゃねぇよ」
素直になってほしいっていう気持ちが強かった。
俺ばっか後悔しないよう自分がしたいことして
こいつは俺のために自分がアレルギーになっても動物園に行った。
俺を喜ばせるために自分を犠牲にした。
本当っ…ばかつーか。
そういうところ反則だよ。
可愛すぎて離したくなるんだけど。
