家のリビングで一緒にいることはある。


だけどあたしが話しかけても


颯は答えてくれない。




今朝も朝食でチョコレートジャムを塗ったパンケーキを食べたんだけど。



その朝食の時間に颯に話しかけた―…




「文化祭頑張ろうね」って言った。




そしたら前みたいに「食べながらに喋んなよ」っていうこともなく



颯は大好きなチョコレートジャムのパンケーキを食べ残して




家を出た―…




神崎ママはあたしと颯の異変に気づいて心配してくれたけど「ちょっとした喧嘩ですよ、すぐ仲直りします」。



そうあたしが言ったら「そう…。ならいいけど…」って言ってた。




お母さんには色恋沙汰で迷惑かけたくない。



色恋沙汰じゃなくてもほかのことでも迷惑かけるのは避けたい。



颯とちょっとした喧嘩…




喧嘩じゃない。


これはすれ違い。


いやすれ違いでもない。




すれ違いで済む話ならまだ解決できる。



だけどあたしは颯に捨てられて嫌われて



颯はあたしを避けるいっぽうで




あたしは颯に話しかけ続けるいっぽうで。




これはあたしの片想い―…



すれ違いでもなければ喧嘩でもない。




あたしの片想いで神崎ママに迷惑かけるのは絶対嫌だ―…



片想いってこんなに切なかったかな。



颯と付き合う前の恋は


こんなに切なかったかな。




胸の奥がチクチク痛んで



苦しくて泣くぐらい辛くて苦しいのに



泣けない。




今日の朝食べた颯が大好きなチョコレートジャムのパンケーキは



甘いはずなのにすごく苦く感じた―…



ビターショコラよりも遥かに苦く感じた―…