「宇佐美さん!」
近くから知ってる声が聞こえる。
直谷くん…?
周りを見渡すと後ろから直谷くんが走ってあたしのところへ向かってる。
どうしたの?
そんなに慌てて…。
直谷くんは汗だくであたしの目の前まで来た。
「どこ行ったのかと思った…。宇佐美さんが行方不明にならなくてよかった…」
行方不明って…!?
「宇佐美が突然カフェ抜け出したから家に帰ったんじゃないかなって思って家のチャイム鳴らしたけど応答なしだったからいないのかなって思って探したらようやく…」
直谷くん…。
そんなにあたしのこと心配してくれて探してくれて…。
「ありがとう」
あたし嬉しいよ。
ニコって微笑むあたし。
現状的に颯があたしを追いかけてくれなくてよかったかもしれない。
あたし今颯に会ったら泣きながら嫌なことばっかり言っちゃう気がするんだ。
まあでも、颯はバイト中だから追いかけては来ない。
直谷くんがあたしを、心配してくれてよかった。
「…颯ってさ。モテるんだよね、自覚はあんまないみたいだけど。だから颯のファンって結構いて…翼が言ってた。颯は来る者拒まず去るもの追わずって感じの人だって。あたし逃げてしまった…、颯はあたしのこと追いかけてくれなかった…」
いや追いかけてくれなくてよかったんだけど。
でも追いかけてくれないと…
やっぱりあたしのことなんか好きじゃないのかな。
どうでもいい存在なのかな。
「やっぱり颯はあたしのこと特別だと思ってなかったのかな…」
あたし一人で調子のって颯とデートしたりしたのかな。
『俺のもんだろ』
『俺から離れんな』
離れるなよって言ったけどそんなの所詮口だけだったのかなー…?
