「じゃあ、おやすみ。おばあちゃん。リリ」
小さな居間の中心にある電気を消す。家全体が、真っ暗だ。
疲れた身体は、私の脳から出された命令に従いたくないらしく、結局今夜はお風呂に入らないことにした。何しろ時計は十時をさしていた。早寝早起きがモットーの私に夜ふかしは似合わない。
おばあちゃんは私の部屋の隣の寝室へと消えた。リリは私にすり寄ってきたので私と一緒のベットで寝ようと思う。
リリはさっきのことなんか忘れたように、私の腕にすっぽりとおさまっている。まあ、そこが猫らしくて可愛いのだけれど。
キイ、と小さな音を立てて私の部屋のドアが開いた。リリは相変わらずおとなしい。
「よし、じゃあ寝るよ。リリ。」
リリを抱えてベットに入り、一枚の毛布と掛け布団を二人で半分こ。温かい。幸せ。リリの頭をなでていると、夢にアイツが出てくることなんてありえないような気がした。
「リリ、おやすみ……」
そう言って目を閉じてから私は思った。
―――倒れた私を家まで運んだのは誰?