ストーカー【感染】


「ははっ、そんなに必死にならなくてもいいでしょう」
「いや、それはその……」

 さっきからずっと、彼はクスクスと笑い続けている。
 ……そんなに私の口調は滑稽だったかな。

「笑いすぎですよ、シノノメさん」
「いえ、失礼。可愛いなと思ってしまったもので」
「なっ、可愛いって―――」
「冗談ですよ」

 その言葉に声にならない声を上げる。まんまと騙された! 一瞬でも盛り上がってしまった私は単純そのものだ。

「あらま、単純ですね」
「シノノメさんって何気にいじわるなんですね」
「僕ですか。まあ、それなりには」
「それなりにって!!」


 それからいろいろな話をした。シノノメさんは料理が得意で、よく自分用のプリンを作ること。彼は近所の子供にいろいろなあだ名をつけられていること。職場の仲間が最近調子を崩したこと。

 すべてが私にとって新鮮で、知らなかったシノノメさんが見えてくる。

 堅物な人かと思ったけれど、案外そうでもないのかもしれない。特にプリンの話はシノノメさんのイメージと違いすぎて、私はしばらく笑い転げていた。

「……はあ、シノノメさんって面白いんですね」
「また冗談ですか?」
「いえいえ! これは心の底から思ってますよ」

 私がそう言うと、
「あれ?」
―――ツー ツー ツー ツー ツー……

なぜだか通話は途絶えた。