「僕に会ったときにはあんなに怯えて、喋ることも困難でしたよね。新たな被害に遭われた今、何故そこまで淡々と話せるのです?」
それは嘘をついているからです、なんて言えない。そりゃ、今からなら撤回することもできるわ。でも本当だと二回も言ってしまった。言った以上……隠し通すしかないんじゃないの?
しょうもないような、私自身がついた嘘に惑わされているのはごめんよ。隠し通してみせる。
「あのときはシノノメさんに慣れていなかったですし、何よりストーカーのようなことをされるのは生まれて初めてだったので」
「そうですか? それならいいのですが」
咄嗟にでた言い訳のわりには我ながら上出来だったと思う。シノノメさんが本当に納得しているのかはわからないけど、この場はとりあえずよしとする。
「だから私は電話してみたんです。シノノメさんは頼れそう、だった、し……」
「え?」
しまった。私は何を言っているの。言ってから口をふさぐも、すでに手遅れ。違う違う。興味本位であって、シノノメさんが頼れそうだとかそういうのでなくて。
顔が熱い。そんな誤解されるようなことを言ってしまった自分が恥ずかしい。
「あの、今のは間違いで!」
「……はい、わかっていますよ」
携帯の奥の彼の笑った顔が目に浮かぶようだった。



