ストーカー【感染】


 私の目が限界に近づいてきた頃、ようやく夜九時になったことに気づく。ゲーム特有のブルーライトは私の視神経を刺激する。あまりするんじゃなかったな。

「さてと」
 名刺を再び引き出しから取り出し、まじまじと眺める。特に困ったことはないけれど、かけてみようかな。迷惑、かもしれない。でも番号を教えてくれたってことは、かけても大丈夫ってことよね。
 もしシノノメさんがストーカーだった場合危険だけど、私の中の好奇心が暴れてるんだ。

 お父さん以外の社会人男性に電話をかける。危険なカオリがしないでもないけど、たかが電話だし。それに私は高校生。危険かそうでないかの線引きなんか、簡単にできる。

 じゃあ電話を容易にかけてしまうのも危険じゃないか、という私の中の天使の声は無視する。

 そりゃ、シノノメさんのことはまだ何も知らない。でも私を家まで運んでくれて、会ったときもいかにも真面目そうな顔をしてた。それにスーツを着ていたし、きっと会社にだって勤めてるんだよ。下手な真似をしてクビになることは避けるはず。

 大丈夫。

 そう言い聞かせて、書かれていた電話番号をスマホに登録し、発信ボタンを押す。

 コール音が二回。そのあとに、
「はい。シノノメです」
彼が出た。