「残りの手紙は、と……」

 指で数えてみると、残りは十通近くあった。
 これをいちいち読まなきゃいけないのか。正直、面倒くさい。萎えてくる。
 でも、シノノメさんの「僕が出したのは一通だけ」の真偽を探りたい気もする。

 まあ、流し読みでいいか。大体の概要をつかめればいいよね。

 残りの封筒を束ねて、全部まとめて封を切る。重ねた紙の強度は想像以上で、私の手の力でギリギリちぎれるほどにもなっていた。

 封を切った封筒を逆さにし、机の上に乱雑に手紙が散らばる。やはり二つ折り。ワンパターン。
 とりあえず二通目を読もう。

 私は散らばった紙のなかから、一通選んだ。特にこれを選んだ意味はない。なんとなく。
 一通目よりも若干外側にシワのついたそれを手に、私は手紙を開く。

「え……?」
 おかしい。
 差出人は変わらずシノノメさんなのに、一通目と明らかに字が違う。大人の字ではあるけれど、彼の字じゃない。
 いや、さっきのがシノノメさんの字じゃなくて、こっちが彼の本来の字なのか。

 わからないまま、私はただ呆然と手紙を見つめるだけ。