シノノメさんがストーカーだったなら、さっきも思った通り、追いかけられたときの辻褄が合う。
 私に恩を売り、私に近づける絶好のチャンスだし。

 しかし、シノノメさんがストーカーなら、私をそのまま自宅に監禁することもできたはず。欲をおさえて私を無事に送り届けたのか。そういう考え方もできる。

 いや、まずシノノメさんにとらわれすぎじゃないか。私の友人。近所の人。顔見知り。もしかしたら相手が私の存在を知っているだけで、私は全く知らない人。
 どんな人にだって、人の後をつけることくらいはできる。だからシノノメさんがストーカーかどうか、イエスかノーか判断するのは間違っている。

 じゃあ、あの夢に出てきたストーカーの声とシノノメさんの声が同じなのは、どう説明する?
……偶然、で片付くのだろう。

 吐き出せないもどかしさ、むずがゆさを感じ、机の端に爪で引っ掻き傷をつけた。