入院生活は、結構長引いた。

担当医師の配慮です。

「金具で固定すれば治りは早いんですが、
 若い女の子の足に傷をつけるのも
 どうかと思い、
 ギプス固定の自然治癒で治したいと
 思います。
 ただ、時間がかかります。」

私も親も納得しました。

でも、長いって言っても、半端ではない。
半年とかの話である。

つまり、春休みに入院して、
夏休みま明けでかかる。
これは相当だ。

でも、私はあまり苦にしてはいなかった。

何故なら、担当医はイケメンだし。
そこ?

看護師さんは、気さくで。

私が漫画読んでると、
「それ、何何? 読み終わったら
 借りていい?」

なんて、ナイショで、漫画の貸し借りをしていた。

ただ、新学期が始まっても学校には
行けなくて、
新しいクラスはどうなのか、
さっぱりわからない。

クラスの人たちも、
担任の顔さえ知らない。

もちろん授業の遅れも気になる。

ライオンは、しょっちゅう見舞いに来てくれて。
(残念ながら、
 またもや別のクラスだった。)

で、何故かいつも、学校の友だちを大勢連れてくる。
病室でひとりぼっちの私を気遣ってくれてたのか。

私がベッドで勉強し、仰向けでノートを書いていると、

「お、勉強してるんだ。」

「うん。」

「そんな風に文字書いてると、
 上から文字落っこちてこない?」

「あははは。」

んな訳ないだろうが。どういう発想?

「骨がしょっちゅうずれるから、
 レントゲンばっかり。」

「ほう。
 で、どれをお見合い写真にするん?」

「は?」

こいつの脳はどうなってるんだ?
おとぼけくんですか?

いやいや、楽しませてくれてるんだね。

ある日、父が見舞いに来て言った。

病院でライオンと出くわしたそうだ。

「あいついいやつだな。」
「会ったの?」

「いきなり頭下げられた。」
「なんで?」

「俺がお嬢さんを家まできちんと
 送り届ければ、
 こんな事にならなかったのに。
 申し訳ありませんでした!!って。」

そうなんだ・・・。

あの能天気な男が、陰ではこういうこと言うんだ。

へえ~~~。

-------------------------

新学期も始まって数日経ったある日。

ライオンが、またもや友だちを大勢連れてきた。

その中に、見たこともない人が。

「こいつ高田。
 俺のクラスに転入生として来たんだよ。」

「あ、そうなんだ。」

「転校したてで、まだ友だち少ないから、
 仲良くしてやってくれよ。」

「うんうん。」

で、ライオンを含めた仲間が、
またもや病院なのに、
わーわー騒ぐ中。

転校生とやらだけが浮いている。
まあ、転校したてだから、馴染めないのかもね。
しょうがない。


だが、その転校生とやらが、
こそっと私のそばに来て、

「俺、高田 真(タカダ シン)
 『シン』って呼んでくれ。」

と、ボソボソっと言った。

「は~!?」

初対面の人に、いきなり下の名前呼び捨てにしろって。

こいつ、馴染めないのか、図々しいのか
いったいどっちだ?