「ほら、コートにマフラー、暖かくしていきなさい」

「はーい……」

「帰ってきたらごちそうあるからね、よかったらあっちゃんでも呼んだら?」

「……うん」



どこか元気がないのが分かっているけど、理由はあえて聞かないんだろう。お母さんはそう言って、わたしの肩をぽんぽんと優しく叩いた。



「……いってきまーす」



外に出ると、びゅうっと冷たい風がふく。

うぅ、寒い。家の中に戻りたい。それでもブルさんは止まらず、ずんずんと進んでいく。



引っ張られるようにしていつものように商店街へと出ると、そこには去年のクリスマス同様キラキラとした電飾と、ケーキを買いに来た人やイルミネーションを見に来たカップル、カラオケに向かう高校生たち……とたくさんの人でにぎわっていた。

みんなたのしそう。こんな落ち込んだ気持ちでクリスマスを迎えているなんて、わたしくらいなものだろう。

つい先日までわくわくとした気持ちでみていた灯りも、今のわたしの目には痛い。