『あの、シローせんぱい!いつもここでごはん食べてるんですか?』

『ん。そう』

『ごっご一緒してもいいでしょうか!』



そんなわたしの、精いっぱいの勇気。



『シローせんぱいと、ごはんが食べたいですっ……!』





断られたら諦めよう。また違う道を探そう。

けど、いいよって頷いてくれたら。



『……ん、いーよ』



きっと、もっとスキになる。

あなたしか、見えなくなってしまう。



その想いの通り、過ごす日を重ねるほど、もっともっと好きになっていった。

その笑った顔、優しい声、柔らかな空気。全部が。



だけど、そのうちにシローせんぱいは不意に視線をそらすようにこちらを見なくなる時があることに気づいた。

その視線の先にはいつも、ベランダにアヤさんがいて、『あぁ、だからか』って納得出来る自分がいた。



意地っ張りなのか照れているのか、本人の口からは『アヤが好き』とは聞いていない。だけど、そんなに熱心に見ていれば分かる。


毎日、毎日。

声のひとつもかけずに、遠くから見つめてる。そんなシローせんぱいの隣ですらも、いたいと願ったのは自分。



叶わない恋でも、それでもスキ。

すべてわかっていたことなのに。