「あー!とったー!」

「まぁまぁ。代わりにチョコあげるから」

「やった!いいんですか!」

「……えなは単純な子だね」



チョコレートひとつに顔色をぱぁっと明るくさせるわたしに、シローせんぱいはあきれたように笑う。



そしてポケットのなかから個装されたチョコレートをひとつ取り出すと、わたしの手に乗せた。

その拍子に触れたひんやりとした体温。冷たさに心がどき、と音をたてる。



いつもみんなに囲まれて、人気者のシローせんぱい。みんな、いつだって自然体なシローせんぱいのことがだいすき。

わたしも、シローせんぱいのことがスキ。

ひとりの、男の人として。



ひょんなことからスキになって、ひょんなことから毎日一緒にごはんを食べられる関係にまでなったのは、ここ1年ほどのこと。

まだきもちを伝えられる気配はまったくないけれど、スキな人とお昼休みをのんびりとすごす。それだけで、じゅうぶん幸せな毎日だ。