「ね、寝たふりなんてずるいです……!」
「目閉じてただけだけど……それより、なんでえな、俺に触ったの?」
「え!?」
笑顔のまま問うその声は優しいけれど、いじわるさを含んでいるのは簡単にわかる。
「なんでって……ただの偶然、あたっただけで、」
「へー……偶然、ねぇ」
「もういいじゃないですか!手離してくださいよー!」
「やだ」
シローせんぱいはそう言って指を絡めるようにして手を握る。
包むように絡められる、冷たい長い指。
「えなの好きな人、教えてくれたら離す」
「ええ!?」
またその話!?
よほど知りたいらしいシローせんぱいは、真面目な顔でじっと私を見た。手は、つないだまま。
「名前は?」
「い……いえません、」
「学年は、クラスは、どんな奴」
「いえませんってば!そもそもなんでそんなに知りたがるんですかっ」
真っ赤な顔をしているだろうわたしの体温は、言えば言うほどどんどんと上昇していく。



