あ、シローせんぱい。

わたしが気付いたと同時にシローせんぱいもわたしが目に入ったらしく、『えなー』と口をぱくぱくさせ、無表情のまま手をふる。



この前のこともあってどんな顔をしていいか戸惑ってしまう。

けど手をふられればやっぱり嬉しくて、抱いていた複雑なきもちもすぐに吹き飛んだ。



振ってくれた手に振り返したい、けど両手にノートを抱えていることを思い出し、振りたいけど出来ない、といった状況にわたわたとしてしまう。



「っ~……」



そんなわたしを見て、おかしかったのだろう。シローせんぱいはふっと笑う。

『笑わないでくださいよー!』そう言おうとしたその時、シローせんぱいは後ろから、頭にボンッとボールをぶつけられた。



「……痛いんだけど」

「男同士の真剣勝負の最中に女子に手振ってんじゃねーよ!」

「真剣勝負って……」



頭をさすりながら痛がるところもまたかわいい……。

ともだちとじゃれるシローせんぱいに、つい笑みがこぼれてしまう。