「……シローせんぱいって、アヤさんのどこがスキなんですか?」
「だから、別にスキじゃないし」
「ウソつかないでちゃんと答えてください!」
よほど認めたくないのか、しれっと否定するシローせんぱいに、わたしは口をとがらせて言う。
「……じゃあ、シローせんぱいは“あの人”のどこがスキなのか、教えてください」
あえて“アヤさん”と言わずに、濁した言い方。それでようやく納得したのか、シローせんぱいは少し考えたように黙って空を仰ぐ。
「……かわいーとこ」
そして、小さくこぼされた言葉。
「ちょっとしたことで、すぐ笑うんだ。子供みたいで、どこかほっとけなくて……愛しくなる」
かわいい、人。
ほっとけない。愛しくなる。
「“あの人”が笑ってくれると、うれしいよ」
そう言ったシローせんぱいは、愛しいものを見つめるような優しい瞳をしていた。
だいすきなその笑顔。なのに、こころをズキッと痛くさせる。