「……なにボーッとしてんの。カレー、こぼしたらシミになるよ」

「えへへ……アヤさんに見とれてつい」

「アヤ?あー……あいつ、女子にも人気あるもんね」



まるで他人事のような言い方。興味のなさそうなその言い方が、むしろ彼女を意識しているとバレバレで、またすこし胸に痛い。



「……シローせんぱいだって、見てたくせに」

「見てないし」

「見てましたぁーっ」

「見てませんー」



子供のような言い合いに、ぶぅっとムキになるわたしに、シローせんぱいは呆れたように手元のパックジュースを一口飲んだ。



見てたくせに。自分だって、スキなくせに。

どうしてか、シローせんぱいはいつもそれを認めない。



いっそ、『これくらいスキなんだ』って開き直ってくれたら。

そしたらわたしのこころだって諦めがつくかもしれないのに。



そんな、『もしも』の期待。