『……涙と鼻水ですごい顔』

『ず、ずびばぜんっ……』

『折角ブルさんが見つかったんだから、笑いなよ』



そう、わたしの顔を濡らす涙を熱い指先で拭って笑ってくれた。

今思えば、涙と鼻水でぐしゃぐしゃなわたしの顔がおかしかっただけかもしれない。

けど、それでも、その笑顔は一瞬にしてこころに焼き付いた。



そんな彼の後ろでは大きなツリーがチカチカと光って、電飾もそれに照らされる金色の髪も、すべての景色がまぶしかった。

まぶしすぎて、消えない。その夜も、次の夜も、そのまた次の夜も、まぶたの裏に現れる。

いつだって、彼が笑っていた。



あの日、あの瞬間にわたしは、恋に落ちていたんだと思う。



冬休みがあけた学校で、たまたま彼を見かけて、その時初めて名前を知った。



『おい、シロー!待てって!』



シロー、せんぱい。

それがわたしが恋をした、彼の名前。





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