「そんな不毛な恋、やめときなって」



お昼休みを終え、5限目のはじまりまであと数分と迫った頃。

戻ってきた教室で、あっちゃんは不機嫌そうな顔でいう。



「ふもう?」

「『不毛……なんの進歩も成果も得られないこと。また、その様』……つまり、叶わない恋なんてやめときなってこと」



携帯の画面に表示された、『不毛』の言葉の検索結果。それを見せながら、ばっさりと言われてしまう。


あっちゃんはさっぱりとしたショートカットの外見通り、中身もとってもさっぱりとした人だ。

他の人には誤解されてしまうことも時々あるけれど、付き合いの長いわたしには、その『やめときな』が嫌味や悪意ではないことはちゃんと分かる。



「かなわない……かなぁ」

「だって向こうにはスキな人がいるんでしょ?しかも相手はあの橋本彩。美人で頭良し性格良し。上からは可愛がられて下からは慕われる人気者だよ?」

「うん。アヤさん、いい人って有名だよね」

「そんな相手に勝てるとでも?」



うっ……。そりゃあ、勝てるなんて思っていないけどさ。

わたしは顔もふつうだし、頭はむしろ悪いし。おかあさんにもあっちゃんにも、よく『どんくさい』って言われるし……。